クルゼイロのユースチ-ム指導コンセプト

ユースチームの練習の指導コンセプトとは?

選手を分析する

 クルゼイロのスタッフたちは、まず選手1人1人の特性を把握する努力をします。テクニックやフィジカル的なことはもちろんですが、どういう性格なのか、今どういう精神状態なのかも調べます。1人1人の選手の特性を知った上で、誰がどんな練習をしたらいいかを考えるのです。選手のことを知るためには指導者は指示を出さず選手の好きなようにプレーさせて、それを黙って見ます。

 ユースの選手がプロ選手と違う点は、まだ一人前の選手として完成していないということです。最大の長所が、これまで自分が思っているものとは異なることも少なくありません。稀にですが、自分が短所と悩んでいたところが実は最高の武器だったなんてこともあるのです。

 今まではFWだったという選手も、実はDFのほうが向いているというケースも少なくありません。ボランチだった選手がサイドバックで急成長することもあるのです。ですから、プロ選手の場合はFWの練習、MF用の訓練、DFだけのトレーニングなどを行いますが、この年代ではまだポジションを完全に確定するのではなく、色々なことをやらせるのです。つまり、これからの指導方法によっては今までとはまったく別のタイプのプレーヤーに生まれ変わる可能性を秘めているのです。

プロとして通用するために

 ユースチームの選手はプロになろうとしている選手です。プロになるためには極端な短所を減らし、すべてのスキルを平均レベルまで引き上げなければなりません。大きな欠点を持っていると相手の選手たちはそこを攻めてくるからです。そうなったらプロとして通用しません。ですからチーム練習とは別の個人練習も少なくありません。そこでスキルの穴を埋めるのです。

 もちろん長所を伸ばさなければプロにはなれません。その場合は難しい課題を与えます。与えた課題がクリアできればさらに難易度の高い課題に挑戦させます。乗り越える方法は教えません。克服法は1人1人違いますし、自分の力で乗り越えなければその後壁にぶつかった時に挫折してしまうからです。たとえばゴールを量産している選手がいれば、彼に特定のマークをつけます。

 またこれはプロの練習でも同じですが、選手たちのモチベーションを上げるためにボールを使った練習を多く取り入れます。ブラジルの選手はボールがあればフィジカルの辛い練習でも喜んでやるからです。また競争心をあおるために勝敗のつくゲーム形式を多く採用します。プロの選手になろうという人間はほとんどが負けず嫌いです。勝ち負けがはっきりする練習だと集中してやるからです。

 そして彼らには試練の時が定期的に訪れます。それは入団テストです。自分よりも優れた選手が現れた時点でチームを去らなければなりません。それも彼らの練習に対するモチベーションを上げることにつながっているのです。(東邦出版「南米の強豪 クルゼイロに学ぶ 図解・ブラジルの練習」より